国際シンポジウムでBest Paper Awardをとった話
先日参加した国際シンポジウム(International Symposium on Educational Technology)で恐縮なことにBest Paper Awardをとった。(やったー!)
審査の流れや大会の様子はここにまとめた。
嬉しさと困惑が混ざっているけれども,初国際会議で投稿〜発表までにやったこと・感じたことをまとめてみる。
投稿編:
英語に翻訳すると研究内容がブラッシュアップされる
日本語は大変便利なことに,抽象的な言い回しや表現を得意とする。主語を明確にせずとも意味が通じる分,研究がなんとなく「言えた」気になるのも事実だと感じた。
今回はショートボリュームとはいえ英語で書いたことで,こうした「なんとなく」表現していたことを明確に表記せねばいけなくなった。
誰が何をすることで誰に対して・何に対してどのような効果があるといえるのか。それを明確に書かないと伝わらないし,逆にそれを意識することで回りくどい説明がカットされたように感じる。
私は説明が長い傾向があるので,英語で物事を考える機会を増やしてトレーニングしたいなと思った。
ストーリーの流れよりも明瞭性
国内雑誌に投稿した際は,論文の中のストーリー性(ぶつ切りでなく読んでいてリズム感がでてくるような,なめらかに話題がつながる言い回し)について熱心に指導を受けた。
私の報告では量的な検討をした後に学生インタビューをする…という(煩雑な)流れだったので,量的な検討(方法・結果・考察)→インタビュー(方法・結果・考察)という段取りで書いていた。
しかし今回の場合は,最初に「この研究はMIX法である」と述べた上で,方法は方法で一つに,結果は結果で一つにまとめなさいと査読を受けた。
これについては見解が別れると思うし,必ずしも国際誌の特徴と位置づけることは危険だが,ストーリーの流れよりも本研究におけるパラメーターや手続きは一箇所にギュッとまとまっていたほうが,読み手にとっては嬉しいのかな?という気づきを得た。
査読をしてもらうと英語の勉強になる
当たり前な話ですが,執筆する段階もだし,査読をしてもらっても英語の勉強になる。最初は自分の書いた英語の9割が赤入れしてもらうことになり,英語のアウトプットをしてこなかったことを痛感していたが,投稿→査読修正→スライド作成→ブラッシュアップを続けていく中で,赤入れをしてもらう箇所の割合が減ったように感じる。
自分自身が簡単な英語を作れるようになったこと,Google翻訳を使いこなせるようになったこと(翻訳してもらいやすいように日本語を構成できるようになったこと)がその要因として挙げられると思う。
また,例えば本研究で質問紙調査をしたことを当初は"Questionnare Survey"と記していたが,査読で"Questionnare"か"Survey”だけでいいんだよ,と教えてもらった。
査読では
I frequently see even among "so-called" high-quality peer-reviewed journals. In fact, these two words ("questionnaire" and "survey") are synonyms. Therefore, back-to-back utilization of the two terms is redundant and confusing. Please choose either “questionnaire” or “survey” as a term to describe your quantitative instrumentation, and use only that one term consistently throughout the manuscript.
と書かれていて,ハイクオリティな学会誌でも同様な間違いがあるということも知れて,へーー!と勉強になった。
こういうのは国内誌のTranslateしたAbstractを書くだけでは気づけないかもしれないので,とてもいい機会になった。
あと,camera-ready versionを提出してくれというメールが届いたときに,「なんだデモムービーでも作るのか…?」と思っていたが,ホンチャン用というか,もうこれで印刷できるよ!という直前の完成形のバージョンだということを学ぶことができた。
研究界隈では常識かもしれないけれど,はじめての人にはわからないよ。。
査読が建設的で丁寧。褒めてくれる。
正直,国際シンポジウムはジャーナルの査読ほど力を注げないだろうという気持ちもあったが,査読のコメントを3人がくれ,そのうち1人はとても丁寧なコメントをくれた。
国内誌の査読と似ているが,いいところは褒めてくれるし,さらに建設的な意見を述べてくれる。
例えば,「構成がわかりにくい」と指摘した後に,例えば…で具体的にどこの節や章を入れ替えるかという指示を出してくれるなど,このコメントを貰った後何をしたらいいのか明確なものが多かった。
もちろん,もうすこし一般化した示唆を入れるべきだ,など具体的な指示を言えないコメントもあるものの,何をしたらどうよくなるのか伝わる査読は,今後自分が研究者に成るうえでも気をつけていきたい観点である。
(※この間投稿した国内誌の査読ではとてもいい査読者に恵まれ,理論的かつ建設的な意見を多く頂くことができた。)
発表準備編:
スライドは一ヶ月半前から作り始めた
先延ばし傾向のある私にとっては偉業だと思っているが,今回は英語が伝わらないであろうという自信があったので,スライドを一ヶ月半前から作り始めていた。
といっても他の研究や授業等で忙しい中作っていたので,実働時間は短い。
「少しずつでもやっている」という事実が行き場のない不安を少しでも沈められるように,自分で意識しながら行動をしていた。
その後イラン人の研究員の方に毎週40分ほど添削してもらい,まずセリフの完成→スライドのブラッシュアップ(グラマーチェック)→発音の確認
の順番で英語をチェックしてもらった。
個人的に,一ヶ月半前から作り始めていたものの想定質問への対応スライドは3日前に作り始めるという感じだったので,よろしくなかったなと思う。
セリフや質疑応答対策は本ベースに取り組んだ
Amazonでベストセラーだったこの二冊を買ったところ,大変よかった!
英語ベースで内容が構成されており,収録されている音声もスピードや発音ともにわかりやすい。
本書との対応付がやや大変なところがあるが,聞き流しもできるし,"Sorry, I couldn't follow your question"とか"As we mentioned before","In the next slide, we explain more details."とか,「そのまま使える」フレーズがあるので,読むと心強かった。
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正直私は緑色の本しか読んでいないが,今後Poster発表や司会を務める機会のときに,ピンクの本もかなり役立つであろうなと感じている。
発表編:
フリートークができないとあらゆることの前提に立てない
今回は英語が使えないとやばい!という危機感を一次体験して前向きに失敗することを目的に国際会議に参加した。
そんな状況で参加して一番思ったことが,フリートークのできなさへの絶望感(笑)だった。
ペーパーを書いたり普段のサーベイを通して,思ったよりも「研究に関する話題」はできるようになったように感じるのだけれども
ただの自己紹介とか,何気ない会話とか,相手に質問をするとか,相槌を打ちながら質問に答えるとか,そういうときに何を言えばいいのかわからなく,苦戦した。
一ヶ月前ほどからオンライン英会話を始めていたけれど,基本カランメソッドをしていたのでフリートークを全くしていなかった。
個人的にカランメソッドは気に入っているけれども,他のコースで別のスキルも補填しないといけないなという気持ちになった。
何気ない会話。何気ない会話。そう…。大事…。
必ずしも一般化や定義に関する質問がとんでこないが,スライドをちゃんと作ればクリティカルな質問はやってくる
たとえば本研究における新規性や用語の定義,一般化可能性などについて言及されるかな?と思ってスライドを用意していたが,必ずしもそういった「王道」な質問はあまり来ることがなかった。
しかし,先に紹介した緑色の本では「質疑の50%はより詳細なデータを尋ねる問である」と書いてあったが,私の場合はそうではなかった。
というよりも,これは思うにスライドの作り方が悪い人が多く,伝えるべきデータを伝えられていないからそういう事実確認だけで時間が過ぎていくのだろうな…と他の発表者を見ながら思った。
例えば,時間に制限があるからかMethodのところをがっつり除外する発表者もいたし(理解に苦しむ),それどうやって評価したの?と質問されたら突然「ルーブリックを使った」と言い出したりして,今までルーブリックを使ったなんて一言も言ってないよね…?みたいな混乱が出てくるとかがあった。
私が参加した学会の場合だけかもしれないが,自分が書いたProceedingを読み込む人は少なく,発表しながらチラチラと読むのがいいところという感じなので
(本当に当たり前だと思うけれども)伝えるべき情報を確実にスライドの中に盛り込みゆっくりと確実に説明すると,事実確認のような質問は避けられるのだろうな,と感じた。
個人的に最低限伝えないといけない事実的な説明を手厚くしたので,自分のプレゼンが終わった後も質問に来てくれる人がおり,そこではクリティカルな質問をもらうこともでき,ディスカッションして仲良くなることもできた。(USJいったよ〜とかLINEくれるようになった。かわいい。)
これまでのことをふまえると,スライドをちゃんと作って事実確認を避けられるような情報の伝え方ができたら,王道な質問はこないで,クリティカルな質問をもらえる可能性が高まる。
そうなった場合,質問を想定することはなかなか難しいので,やはりフリートークで即座に質問に答えられるようにできる英語力が求められると感じた。
(私は応答はどうにかできたが一部聞き取れず,ボスに翻訳の助けを求めてしまいました。)
研究のクオリティについて
私が参加したシンポジウムは,中国,韓国,インドネシア,チェコ等から研究者が集まった。
そこで感じたことは,中国の研究力が上がっているということ。
学生の身分でこういう言い方をするのは良くないと思うが,中には「それ30年前の論文で見たよ」という印象を持つ研究もあったが,ぜひ引用したい・一緒に研究をしたい!と思うような素敵な研究も多く見受けられた。
いろんな学術領域において中国の研究力が上がっていると言われているが,本当にその力と勢いを感じた。
と同時に,日本人が英語で発信する機会が少ないがために,存在感を十分に示すことができていないなということを痛感した。
また,当たり前だが引用する論文がin Englishなものが多いので,先行研究に対して,世界規模できちんと位置づけられるというところに大きな魅力を感じた。
国内研究を決して軽視しているわけではない。しかし,知見を「輸入」するばかりで「輸出」していかないことに対して,危機感を感じた。
日本ではもっと先進的な研究がされている!と言いたくても,それが全て日本語で刊行されていたら他国の研究者にとっては無いに等しいし,研究パートナーとしての前提にすら立てていない感じが,ただただ虚しいと感じた。
英語にはまだまだ苦手意識があるが,今回の発表を通じて「意外とどうにかなる」という学びも得たので,世界に見捨てられる前に存在感を示していける研究者になりたいなと思った。
あと,香港の研究者と仲良くなったので修論が落ち着いた頃に大学見学をさせてもらおうとおもう。
なんで賞をもらえたのだろうか
四谷学院の広告並みに自分は困惑しているが,思い当たるところを少し考えてみた。
- やっていることと結果がシンプルでわかりやすい(キャッチーな研究テーマ)
- 先行研究ではあまり焦点の当てられていない研究観点(新規性)
- 実践的な示唆
私は反転授業で事前学習を頑張りすぎてしまったり生産性が低い学生がいたと示した上で,一体事前学習中に何をしていたのかインタビューで聞いてみた,というケーススタディをした。(やっていることがシンプル)。
そもそも私が研究対象としている反転授業では,伝統的な授業形態と反転授業形態の比較や,ある反転授業実践におけるPRE-POST調査で効果を検証すること,対面授業時にどのような協同学習を取り入れるかなどの議論が多く,事前学習に焦点を当てている研究が世界的に少ないという特徴がある。そのため,研究観点とそこから出た示唆に新規性があったと言えないわけではない。
また,示唆では具体的に教員が授業を設計するときに何を気をつけるべきかを示すようにした。(事前学習時の学習目標を示そう,写経のようなノートテイクを回避させようなど)
そのため,キャッチーだったこと,新しい研究観点なこと,実践的な示唆があるという特徴があったのかな?と思いました。
個人的には研究手法や結果の解釈など至らないことも多くあるのでそこは補強していきたいと考えている。
まとめ:
- やってみたら収穫や勉強になることが多くあったから国際会議に応募してみてよかった
- フリートーク力が必要
- スライドをしっかり作ったらクリティカルな質問ももらえる
- 英語で発信していかないとやばいと思った
- キャッチーで新規性がある研究テーマで実践的な示唆を提示したところ,評価してもらえた
海外へ関心がむいたので,教育工学に関する国際カンファレンスや国際ジャーナルについて少し調べた。
まだサーベイ中なので,もう少しまとまったらまたエントリを書きたいと思う。
寝坊して授賞式の5分前に現場についた。そういうところも直したい。本当に…。
国際学会の口頭発表へ向けた原稿の作成
英語がとても苦手ですが状況を作ることが大切だ,ということで国際学会へ出ることにしました。
1ヶ月ちょい先の発表にむけて,プレゼン資料を作成し始めました。
発表時間が何分なのかも未だわからずですが,用意できることから始めようと思っています。
今日は,Introduction, Purpose of the study, Methodologyに関するセリフをネイティブチェックしてもらったので,そのお勉強記録を記します。
Introduction
「まずはじめに,プレゼンテーションのアウトラインについて紹介します。」
元:At the beginning, I’d like to show you the contents my presentation.
修正後:In the beginning, I want to give you outline of my presentation.
「これから詳細について説明していきます。」
So, I will explain these in more details from now on.
共著の場合の人称について
研究に関することを説明する場合はWe (Ex. We conducted quesstionare ~~)
「これから話します」というプレゼンの展開や,自分自身の紹介のときはIにする。 (Ex. I will explain these in more details)
Oralの際に先行研究について述べる時の言い方
元:~~~ found that even though students had watched the lecture video before the class, there was a difference in the level of understanding among them.
修正後:Associate Professor ~~~ in her research on the Flipped Classroom found that even though students had watched the lecture video before the class, there was a difference in the level of understanding among them.
★敬意を示すために役職を加える。(論文中では敬称は略すけど…。)
★何をした先行研究なのかわかるような一言を加える。
元:〜〜,it should be done to consider how students prepare in Flipped Classroom.
修正後:〜〜,how students prepare in Flipped Classroom should be considered.
★なるべく短くする
元:lacking of students’ habits to prepare might make them have difficulty to learn effectively in Flipped classroom.
修正後:students’ lack of preparation habits might make it even more difficult for them to learn effectively in a Flipped Classroom.
★前置詞でなく分詞を使ってひとかたまりを作るようにする。
発音が合っているか不明確な研究者を引用する時の言い方
This person, O’Flaherty, I hope I am pronouncing his name correctly, pointed out that pre-class activities are not coherently linked to the face-to-face class.
★発音が間違えていると指摘してくる怖い研究者もいるらしい
★多分合っていると思いますが〜と挟んだほうが,万が一間違えていたときもごめんなさいしやすくなる。
複数名の共著論文を引用する時の言い方
et.al.は論文内の表記なので,オーラルで「eṭˈæl」とか言ってはいけない。
元: Mason et al found that unstructured design of the flipped classroom were stressful for students and more directions would be helpful for their learning.
修正後:Mason and his colleges found that unstructured design of the flipped classroom were stressful for students and more directions would be helpful for their learning.
「先程も述べたように」
as I mentioned before
Purpose of this study, Methodology
「まず〜〜について知り,それから◯◯について検討することができる。」(先に前提となるところや課題を明らかにすることに注目するべきである,という文脈で。)
元:So, at first, we should know the real how students prepare and find problems about their preparation.
And then, we should consider about how design pre-class.
修正後:So, at first, we should know how students prepare in reality and find problems related to their preparation.
And then, from there, we can consider about how design pre-class activities.
口頭発表時の「以上を踏まえて」という言い方
元:Based on these discussion, the purpose of this study is to clarify〜〜
修正後:Having said this, the purpose of this study is to clarify
「そのために,〜〜を実施した」
元:For this purpose, we conducted a case study with a mixed method.
修正後:This is why, we conducted a case study with a mixed method.
★論文ではThis is whyはインフォーマルすぎてよろしくないが,オーラルの場合はOK
「この詳細についてこれから説明していきます。」
元:We will explain this in detail.
修正後:I am going to explain more about them[* in the next part].
元:Most students experienced flipped classroom for the first time.
修正後:For Most of the students this was the first experience with flipped classroom.
★Studentsに関連する修飾句が近くにまとまり,聞きやすくなる
「〜〜の方法について説明していく」
元:We will introduce the methodology for the questionnaire.
修正後: I will explain the methodology of the questionnaire.
元:As a result, 73 out of 91 students responded.
修正後:73 out of 91 students responded to these questions.
★手順を説明していくときは,接続するためのフレーズを無理に使わないでもいい。
★安易にAs a resultを多様しがち。。気をつける。
データを選出した後に行った分析を説明するとき。
元:Next, we examined correlation between preparation times and grades to investigate these relations.
修正後:We also examined correlation between preparation times and grades to find out if there is a link between them.
★alsoのほうが「次」のステップの粒度が小さめ…?
次の研究手法について述べるとき
元:Then we will introduce the methodology for student interviews.
修正後:In this slide, I will introduce the methodology that I used to interview students.
★Thenだと,これまでの説明の続きのように思える?
★修正後の方が,説明する内容が変わったとわかりやすい印象になった気がする
「これから調査結果へと話を移していきます」
Now Let’s move on to the research findings.
先が思いやられますが,少しずつできること・説明できることを増やしていきたいなとおもいます。