In medio stat virtus

雰囲気研究者です。

研究室合宿で卒業研究に向けた研究の進め方についてプレゼンした話

学部時代に所属していた研究室(西岡研)の合宿にOGとして参加してきました!

毎年研究室合宿にはOB/OGが参加していて,現役学生の人たちの研究についてアドバイスを言ったり仕事の近況報告をしたりする,縦のつながりを深めるための貴重な機会でもあります.

 

今年は先生から卒研生に研究を進めるための実験や調査のやり方についてレクチャーして話してもらえませんか,というお話を頂いたので,それに関するスライドを(ざっくりですが)作りました.

研究の進め方については既に本でもブログでも有益なものがたくさん出回っているとおもいますが

今回は私の出身研究室の特徴である,自分で実験や企画を立案し,その効果検証を行う,教育工学的アプローチな研究をする場合を例にして話しました.

 

これがスライドです

www.slideshare.net

 

細かな倫理審査などは筑波大の場合なので他大学では当てはまらないかもしれませんが

研究計画の立案・実験の実施・卒論の執筆について一部のスライドに解説を加えながらまとめてみようと思います

 

目次

 

リサーチクエッションどう立てるか問題

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リサーチクエッション(RQ)をどう立てるかは一番の本質であり悩みのタネだなと思います.

私自身も未だにうまく作ることができないので奮闘中ですが

学部時代にお世話になっていた教育学類の先生から

XのためにAをBする」という枠を意識して整理するとRQが洗練される,とアドバイスを受けたことがあります.

Xには,自分の研究成果により恩恵を受ける人物や,自分が解決したいと思っている課題が入ります.

Aには主語や自分が実際に行動・提案するときの対象,名詞節が入ります

Bには動詞(〜を明らかにする)や自分が提案する実験・介入の方法(ワークショップのパッケージを開発する,など)が入ります

 

この枠のポイントは,XとAとB,全てに違う言葉が入るということです.

私もよく陥るし今回学部生も少し苦戦をしていたのが,研究目的を述べるスライドに「AをBする」しか書いていないことがあります.

これは目的でなく手法・手段しか説明できていません.

目的はXにあるはずですが,それを明示していなかったら,例えば「新たな学習パッケージを開発する」という,あなたがやること自体が目的と主張することになってしまいます.

すると,聞き手にとっては「で,なに?」「なにがすごいの?」「誰のためになるの?」「なんでするの?」といった疑問が出てきます.

 

研究目的を記述するはずが研究方法を記述しているということを防ぐために,この枠は有益だなと考えています.

経験的に,必ずしもこの枠を使うときれいな文章が作れる!というわけではありませんが,RQを整理するために意識をするという点でおすすめしています.

 

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自分が面白いと思っていることを研究したほうがモチベーションが上がると思うので,自分のやりたいこと・関心のあることを整理することはRQを精緻にする上で重視していいと考えています.

私はマインドマップKJ法といった思考整理ツールを適宜用いて大量に考えをアウトプット・整理するようにしています.

私はよく自分の研究ノートに殴り書きをして,定期的に昔書いたアイディア出しを見返して,それと見比べてまた直して…とやっていました.

まあ自分に合ったスタイルで自らの関心は整理してもらうとして

重要なのは「研究として」落とし込むためには関心だけでなく先行研究への位置づけを考える必要があります.

「私はこう思うからやってみた」で完結してしまったら,やってみた動画やエッセイと変わりがないですからね.

そのためにはサーベイをして,「先行研究ではここまで言われているけれどもこれは言われてない,だから私がやります」へとつなげることが大事かなと思います.

卒研だと初めて研究する人がほとんどだと思うので,書き方や実験の進め方にしろ,「こういう研究をやりたい!」と思える論文が1つでもあると進めていくために楽だなと思います.

 

先行研究との位置づけを明確にすると先程提示したXのためにAをBするのときの,「AをBする」も併せて明瞭になるかなと思います.具体的な文章へ変化したりします.

 

一次情報と二次情報を集めるサーベイを行う(手と足を動かす)

今回は,「論文はCiNiiやGoogle Scholarで頑張って探していますし読んでいます!でも先生からはまだ足りないと言われるんです…」という学生さん向けのアドバイスです.

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どこでどんな語句を用いて検索したのか,その情報を先生と共有する

私は学部生の頃「検索したけど先行研究が無いんです!」と伝えると,先生に「本当に探したの?どうやって探したの?」と言われました.

信用されてない?と思ったけどそうではなくて,どんな語句を使ったらどれくらいヒットしたのか,その具体的なデータがないから「全く無いんだ,仕方ないね」と判断するに至らないということです.

毎回はやってられないと思いますが,例えば研究をやりはじめの頃やサーベイになれないうちは

どのプラットフォームでどのような語句を入れたら何件くらいヒットしたか(被引用回数順に表示しているか,最新順に表示しているかなども重要)

こういった情報を指導教官へ伝えることで,先生が次に取るべき具体的な行動を指示しやすくなります.

私が所属していた研究室ではWeeklyレポートという研究の週報を毎週作成していたので,例えばそこで一言その情報を添えるとかするとGoodかなと思います.

 

図書館や大きな書店へ出向き論文誌や学術書を読み漁る

合宿で学部生に「図書館を使っていますか?」と尋ねた際に,全員使っていると回答してくれました.

しかし,そこで文献を得るのは事前にネットで検索をした結果,その図書館にしかないからor複写文献を依頼しないとわからないからと気づいてから図書館へ出向いた,と話してくれました.

複写文献をしたことがないという学生さんも多いと思うのでこれだけ行動していて偉いな〜と思ったのですが

図書館や本屋には偶発的な文献との出会いができる確立が高いメリットがあるので

偶発的なサーベイを目的に図書館や書店へ行くことを個人的におすすめしています.

 

私は学部生の頃はよく図書館にこもって過去10年分の論文誌をバーーっと読み漁り,自分に関心のあるものだけでもいいから読むようにしていました.

あと筑波大の場合中央図書館の4階に教育系の本が揃っているのですが,暇さえあればそこをぶらついて気になる背表紙を探して読むとか,関係なさそうな本棚を散歩して「おぉ良さそう」と文献を見つけることもしばしば取り組んでおりました.

ネットももちろん便利ですが,特に書籍に記述されている情報へリーチするには限界がありますし,気分的にもラッキー!感が出るので図書館や本屋へ足を運ぶことをおすすめします.

 

こうして見つけた論文や書籍から,次に読む文献を芋づる式に探したり

研究者は多くの場合似たような研究テーマで研究しているので,どこの誰が書いた論文かを意識して読むようにするといいかなと思います.

自分の研究関心と近い先生の名前を覚えるのは後のサーベイの効率化に繋がります.

 

足を運んで一次情報を手に入れよう

 

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自分で実際に見たり感じたり経験をして得た情報(一次情報)は何よりも説得力があります.

論文や書籍で得る二次情報だけでは,その世界の内実はわかりません.

私も学部生の頃からこれをよく聞かされていたので,かなり意識をして自分から情報を集めて外へ出るようにしていました.

 

そのため,学部時代は色々なことに参加していました(スライド参照)

例えば大学図書館や小学校のICT実践の見学は,私の研究に直接的には関係ないですが,周辺情報を獲得しておくことで多角的に物事を考えられるようになります.

専門バカになることも防げうると思いますし,行って無駄だと思ったことは一度もないので,今後も意識して続けたいです.

 

私が所属していた研究室はよくワークショップを企画していたので,運営や設営,ファシリテータの仕方を偵察するためにワークショップにも参加していました.(最近はAppleストアのワークショップに参加した.)

研究を始めると「参加者」以外の視点で楽しめるようになるので

毎回どこかへ行くときは何の視点に注目して行くか目標を立てて参加していました.

例えば主催者にファシリテーターをどう育成しているか尋ねたり,その後ファシリテーター本人にその研修モデルを体験してどう思うか尋ねたりしていました.

ほかにもワークショップではどれくらいのゴールを設定しているか,参加費を何円くらいで設定しているか,客入りはどの程度か…など意識して見ていました 笑

嫌な参加者ですね 笑

教育市場調査には同様の視点を持ったり,あとは定点観測を目的に足を運ぶようにしていました.(学部2年頃から通っている.)

まだ一度しかいけてませんが,シーテックなど技術系の見本市にも足を運べるようにしたいなと思っています. 

 

個人的に学部生がイベントへ足を運ぶと得なことがたくさんある(お金がないので商品買わずに質問しても怒られない,「教えてください!」というスタンスで質問しても嫌がられない,むしろ若いのに偉いねと言われたりする)

ので,ぜひ一次情報を集めるために動いてほしいなと思います.

私はICT教育ニュースや

ict-enews.net

SENSEI POTALからよくイベント情報をゲットしていました.便利ですね.

senseiportal.com

 

 

研究で悩んだ時に,外へ足を運んで得た一次情報が助けてくれることが何度もあったので

私自身これから大切にしたいなと思っています

 

サーベイのまとめ方について

正直私は上手にサーベイをまとめられていないのですが

マトリクスを作成してみたり,Wordでジャンル別(学習方略,自己調整学習,メタ認知…など)にファイルを作ってそこにまとめたり…いろいろ試しています.

体系的にまとめたいときはマトリクスを,後に論文で引用しやすいことを意識するならWordでまとめるようにしています.

この辺については落合さんが授業で採用している下記のやり方や(実際にFTMAの授業を受講したときに参考になった.研究を進めていくうちに私の分野だともう少し多くの情報量をまとめたいと思ったので途中でやめましたが.)

lafrenze.hatenablog.com

 

マトリクスを作る方針としては下記リンクもいいかなと思います.

 

readingmonkey.blog.fc2.com

 

同期のゆーじくんはこれを完璧に作っていてまじですごいと思った.

私はズボラなので,自分の今の研究を進めていく上で必要な項目で構成する…といった具合で,もっとゆるーくつくっています.

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↑私が4年生のときに作成したマトリクスの一例.いろんな大学のシラバス検索システムを使って反転授業実践を探した履歴.

 

計画だけでなくプロトタイプを早めに作って持ってくる

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 研究テーマが提案系・開発系の場合は,計画だけでなくプロトタイプを早めに作って持ってくることが大事だと思います.

私は当時,慎重に計画して一発で完成品を作ろうと思っていました 笑

なので抽象的な語句を並べた計画を熱弁し,先生にうまく伝わらないという非効率的なやりとりを1ヶ月くらい続けてしまった経験があります.

「試しになにか作ってみてよ」と何度も言われてようやくプロトタイプをもってきたら,具体性が増してブラッシュアップをする速度も上がり進捗が出ました.

最初からうまくいくことは少ないので,エンジニアリング系だけに留まらず,プロトタイプを早く作ってリビルドしていくことは価値があるなと思います.

 

 

卒論は今から書けるところから書いていく

 

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私は冬の大学院受験を控えていたということもありますが,10月から卒論を書いていました.(提出締切は2月中旬)

まずはタイトル,要旨,章立てといった全体の骨格を設計するところから着手していました.

重要なところの分何度もリビルドが必要なので,これも早めに作ると吉だと思います.一番難しいところだけど.

あとは予備実験や先行研究の概観など既に終わっている・知っていることは今すぐ書けるので,書き始めましょう.

最初から精緻な文章が書けない場合は,「〜〜ということを書きたい」等大雑把なコメントや,箇条書きからはじめてもいいと思います.

そうすると文章を作る難しさを実感するので,先行研究を参照し,どのように文章や論を展開しているのか?という意識を持ってまたサーベイに取り組むことができます.

こうした回り道も自分の力になりますし,まだ時間に余裕のある夏や秋頃からやっていると急がば回れを信じて取り組めるとおもうのでオススメです.

あと一文字でもいいからちょこちょこ書き進めていくと進捗は出るので精神衛生的にも良いです.

 

(9月14日追記分)

また,学部時代「卒論は料理のフルコース」と教育学類の先生から指導をいただきました.

これは箇条書きのように事実を羅列するのではなく,ひとつひとつの章・節・項の中でも位置づけや展開が明確で,かつそれらが統合されたものとしても首尾一貫とし,一つの整合性のある作品として作り上げるということを意図しています.

フルコース料理は一つ一つのお料理ももちろん美味しいですけど,お品書きを読んでワクワクするところから前菜,デザートまでを通して素晴らしい時間を過ごせますよね.

つまり,木も森も見ながら作り上げていくことが大切だ,ということです.

(追記分おわり)

つらくなったら「つらい」と報告する

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これはあくまでも私の考えですが,研究やプライベートでつらくなったときは初期のうちに周りに相談したほうがいいと思います.

よく耳にすることですが

進捗でない→ゼミ行くの嫌だ→休もう→休んでるから研究したくない→またゼミに行きたくない→進捗でない→つらい

 の負のループに陥ってしまったら時が立つほど脱出が困難になると思います.

そうなってしまう前に,進捗が出ていないとしてもゼミに行くのが嫌だとしても,「うまくいかなくてつらい理由」を報告して一緒に考えてもらうほうがいい方向へ転じると思います.

そもそもやっていない…という場合は,

①なんかやらなきゃいけないことはわかるけど具体的に何から初めたらいいのかわからない,②やるべきことは明確だが気分が向かなくてやれない,など色々なパターンがあると思います.

「進捗出ていないです」と伝えるだけでなく,(とても勇気がいるけれども)なぜできないのか,つらいのかまで原因を考えて報告すると,

例えばスモールステップな目標を考えてもらえるかもしれません.(ex. なんでもいいから論文を3本読んでまとめてみる,RQを絞り込むために◯◯について友人5名それぞれに10分インタビューをしてみる,締切を設定する…など)

 

休むことも時には必要ですけどやらなきゃいけないことをこなしたほうが精神的にスッキリすることもあると思うので,バランスに気をつけつつ取り組むのが大事かな,と思います.

 

 

 

こんなかんじでざっくりしたことを卒研生に話しました.

先生や先輩からお褒めの言葉もいただいたので,自分が成長した気持ちになれて嬉しかったです 笑

もし気が向いたら,もう少し細かいことに焦点を当ててまとめてみようかなと思います.

 

 

 

 

国際シンポジウムでBest Paper Awardをとった話

先日参加した国際シンポジウム(International Symposium on Educational Technology)で恐縮なことにBest Paper Awardをとった。(やったー!)

 

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審査の流れや大会の様子はここにまとめた。

scrapbox.io

 

嬉しさと困惑が混ざっているけれども,初国際会議で投稿〜発表までにやったこと・感じたことをまとめてみる。

 

投稿編:

英語に翻訳すると研究内容がブラッシュアップされる

日本語は大変便利なことに,抽象的な言い回しや表現を得意とする。主語を明確にせずとも意味が通じる分,研究がなんとなく「言えた」気になるのも事実だと感じた。

今回はショートボリュームとはいえ英語で書いたことで,こうした「なんとなく」表現していたことを明確に表記せねばいけなくなった。

誰が何をすることで誰に対して・何に対してどのような効果があるといえるのか。それを明確に書かないと伝わらないし,逆にそれを意識することで回りくどい説明がカットされたように感じる。

私は説明が長い傾向があるので,英語で物事を考える機会を増やしてトレーニングしたいなと思った。

ストーリーの流れよりも明瞭性

国内雑誌に投稿した際は,論文の中のストーリー性(ぶつ切りでなく読んでいてリズム感がでてくるような,なめらかに話題がつながる言い回し)について熱心に指導を受けた。

私の報告では量的な検討をした後に学生インタビューをする…という(煩雑な)流れだったので,量的な検討(方法・結果・考察)→インタビュー(方法・結果・考察)という段取りで書いていた。

しかし今回の場合は,最初に「この研究はMIX法である」と述べた上で,方法は方法で一つに,結果は結果で一つにまとめなさいと査読を受けた。

これについては見解が別れると思うし,必ずしも国際誌の特徴と位置づけることは危険だが,ストーリーの流れよりも本研究におけるパラメーターや手続きは一箇所にギュッとまとまっていたほうが,読み手にとっては嬉しいのかな?という気づきを得た。

査読をしてもらうと英語の勉強になる

当たり前な話ですが,執筆する段階もだし,査読をしてもらっても英語の勉強になる。最初は自分の書いた英語の9割が赤入れしてもらうことになり,英語のアウトプットをしてこなかったことを痛感していたが,投稿→査読修正→スライド作成→ブラッシュアップを続けていく中で,赤入れをしてもらう箇所の割合が減ったように感じる。

自分自身が簡単な英語を作れるようになったこと,Google翻訳を使いこなせるようになったこと(翻訳してもらいやすいように日本語を構成できるようになったこと)がその要因として挙げられると思う。

また,例えば本研究で質問紙調査をしたことを当初は"Questionnare Survey"と記していたが,査読で"Questionnare"か"Survey”だけでいいんだよ,と教えてもらった。

査読では

I frequently see even among "so-called" high-quality peer-reviewed journals. In fact, these two words ("questionnaire" and "survey") are synonyms. Therefore, back-to-back utilization of the two terms is redundant and confusing. Please choose either “questionnaire” or “survey” as a term to describe your quantitative instrumentation, and use only that one term consistently throughout the manuscript. 

 と書かれていて,ハイクオリティな学会誌でも同様な間違いがあるということも知れて,へーー!と勉強になった。

こういうのは国内誌のTranslateしたAbstractを書くだけでは気づけないかもしれないので,とてもいい機会になった。

あと,camera-ready versionを提出してくれというメールが届いたときに,「なんだデモムービーでも作るのか…?」と思っていたが,ホンチャン用というか,もうこれで印刷できるよ!という直前の完成形のバージョンだということを学ぶことができた。

研究界隈では常識かもしれないけれど,はじめての人にはわからないよ。。

査読が建設的で丁寧。褒めてくれる。

正直,国際シンポジウムはジャーナルの査読ほど力を注げないだろうという気持ちもあったが,査読のコメントを3人がくれ,そのうち1人はとても丁寧なコメントをくれた。

国内誌の査読と似ているが,いいところは褒めてくれるし,さらに建設的な意見を述べてくれる。

例えば,「構成がわかりにくい」と指摘した後に,例えば…で具体的にどこの節や章を入れ替えるかという指示を出してくれるなど,このコメントを貰った後何をしたらいいのか明確なものが多かった。

もちろん,もうすこし一般化した示唆を入れるべきだ,など具体的な指示を言えないコメントもあるものの,何をしたらどうよくなるのか伝わる査読は,今後自分が研究者に成るうえでも気をつけていきたい観点である。

(※この間投稿した国内誌の査読ではとてもいい査読者に恵まれ,理論的かつ建設的な意見を多く頂くことができた。)

 

発表準備編:

スライドは一ヶ月半前から作り始めた

先延ばし傾向のある私にとっては偉業だと思っているが,今回は英語が伝わらないであろうという自信があったので,スライドを一ヶ月半前から作り始めていた。

といっても他の研究や授業等で忙しい中作っていたので,実働時間は短い。

「少しずつでもやっている」という事実が行き場のない不安を少しでも沈められるように,自分で意識しながら行動をしていた。

その後イラン人の研究員の方に毎週40分ほど添削してもらい,まずセリフの完成→スライドのブラッシュアップ(グラマーチェック)→発音の確認

の順番で英語をチェックしてもらった。

個人的に,一ヶ月半前から作り始めていたものの想定質問への対応スライドは3日前に作り始めるという感じだったので,よろしくなかったなと思う。

セリフや質疑応答対策は本ベースに取り組んだ

Amazonでベストセラーだったこの二冊を買ったところ,大変よかった!

英語ベースで内容が構成されており,収録されている音声もスピードや発音ともにわかりやすい。

本書との対応付がやや大変なところがあるが,聞き流しもできるし,"Sorry, I couldn't follow your question"とか"As we mentioned before","In the next slide, we explain more details."とか,「そのまま使える」フレーズがあるので,読むと心強かった。

 

 

国際学会English挨拶・口演・発表・質問・座長進行

国際学会English挨拶・口演・発表・質問・座長進行

 
国際学会English スピーキング・エクササイズ口演・発表・応答 音声CD付

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正直私は緑色の本しか読んでいないが,今後Poster発表や司会を務める機会のときに,ピンクの本もかなり役立つであろうなと感じている。

 

発表編:

フリートークができないとあらゆることの前提に立てない

今回は英語が使えないとやばい!という危機感を一次体験して前向きに失敗することを目的に国際会議に参加した。

そんな状況で参加して一番思ったことが,フリートークのできなさへの絶望感(笑)だった。

ペーパーを書いたり普段のサーベイを通して,思ったよりも「研究に関する話題」はできるようになったように感じるのだけれども

ただの自己紹介とか,何気ない会話とか,相手に質問をするとか,相槌を打ちながら質問に答えるとか,そういうときに何を言えばいいのかわからなく,苦戦した。

一ヶ月前ほどからオンライン英会話を始めていたけれど,基本カランメソッドをしていたのでフリートークを全くしていなかった。

個人的にカランメソッドは気に入っているけれども,他のコースで別のスキルも補填しないといけないなという気持ちになった。

何気ない会話。何気ない会話。そう…。大事…。

 

nativecamp.net 

必ずしも一般化や定義に関する質問がとんでこないが,スライドをちゃんと作ればクリティカルな質問はやってくる

たとえば本研究における新規性や用語の定義,一般化可能性などについて言及されるかな?と思ってスライドを用意していたが,必ずしもそういった「王道」な質問はあまり来ることがなかった。

しかし,先に紹介した緑色の本では「質疑の50%はより詳細なデータを尋ねる問である」と書いてあったが,私の場合はそうではなかった。

というよりも,これは思うにスライドの作り方が悪い人が多く,伝えるべきデータを伝えられていないからそういう事実確認だけで時間が過ぎていくのだろうな…と他の発表者を見ながら思った。

例えば,時間に制限があるからかMethodのところをがっつり除外する発表者もいたし(理解に苦しむ),それどうやって評価したの?と質問されたら突然「ルーブリックを使った」と言い出したりして,今までルーブリックを使ったなんて一言も言ってないよね…?みたいな混乱が出てくるとかがあった。

私が参加した学会の場合だけかもしれないが,自分が書いたProceedingを読み込む人は少なく,発表しながらチラチラと読むのがいいところという感じなので

(本当に当たり前だと思うけれども)伝えるべき情報を確実にスライドの中に盛り込みゆっくりと確実に説明すると,事実確認のような質問は避けられるのだろうな,と感じた。

個人的に最低限伝えないといけない事実的な説明を手厚くしたので,自分のプレゼンが終わった後も質問に来てくれる人がおり,そこではクリティカルな質問をもらうこともでき,ディスカッションして仲良くなることもできた。(USJいったよ〜とかLINEくれるようになった。かわいい。)

 

これまでのことをふまえると,スライドをちゃんと作って事実確認を避けられるような情報の伝え方ができたら,王道な質問はこないで,クリティカルな質問をもらえる可能性が高まる。

そうなった場合,質問を想定することはなかなか難しいので,やはりフリートークで即座に質問に答えられるようにできる英語力が求められると感じた。

(私は応答はどうにかできたが一部聞き取れず,ボスに翻訳の助けを求めてしまいました。)

研究のクオリティについて

私が参加したシンポジウムは,中国,韓国,インドネシアチェコ等から研究者が集まった。

そこで感じたことは,中国の研究力が上がっているということ。

学生の身分でこういう言い方をするのは良くないと思うが,中には「それ30年前の論文で見たよ」という印象を持つ研究もあったが,ぜひ引用したい・一緒に研究をしたい!と思うような素敵な研究も多く見受けられた。

いろんな学術領域において中国の研究力が上がっていると言われているが,本当にその力と勢いを感じた。

と同時に,日本人が英語で発信する機会が少ないがために,存在感を十分に示すことができていないなということを痛感した。

また,当たり前だが引用する論文がin Englishなものが多いので,先行研究に対して,世界規模できちんと位置づけられるというところに大きな魅力を感じた。

国内研究を決して軽視しているわけではない。しかし,知見を「輸入」するばかりで「輸出」していかないことに対して,危機感を感じた。

日本ではもっと先進的な研究がされている!と言いたくても,それが全て日本語で刊行されていたら他国の研究者にとっては無いに等しいし,研究パートナーとしての前提にすら立てていない感じが,ただただ虚しいと感じた。

英語にはまだまだ苦手意識があるが,今回の発表を通じて「意外とどうにかなる」という学びも得たので,世界に見捨てられる前に存在感を示していける研究者になりたいなと思った。

 

あと,香港の研究者と仲良くなったので修論が落ち着いた頃に大学見学をさせてもらおうとおもう。

 

なんで賞をもらえたのだろうか

四谷学院の広告並みに自分は困惑しているが,思い当たるところを少し考えてみた。

  • やっていることと結果がシンプルでわかりやすい(キャッチーな研究テーマ)
  • 先行研究ではあまり焦点の当てられていない研究観点(新規性)
  • 実践的な示唆

私は反転授業で事前学習を頑張りすぎてしまったり生産性が低い学生がいたと示した上で,一体事前学習中に何をしていたのかインタビューで聞いてみた,というケーススタディをした。(やっていることがシンプル)。

そもそも私が研究対象としている反転授業では,伝統的な授業形態と反転授業形態の比較や,ある反転授業実践におけるPRE-POST調査で効果を検証すること,対面授業時にどのような協同学習を取り入れるかなどの議論が多く,事前学習に焦点を当てている研究が世界的に少ないという特徴がある。そのため,研究観点とそこから出た示唆に新規性があったと言えないわけではない。

また,示唆では具体的に教員が授業を設計するときに何を気をつけるべきかを示すようにした。(事前学習時の学習目標を示そう,写経のようなノートテイクを回避させようなど)

そのため,キャッチーだったこと,新しい研究観点なこと,実践的な示唆があるという特徴があったのかな?と思いました。

個人的には研究手法や結果の解釈など至らないことも多くあるのでそこは補強していきたいと考えている。

 

まとめ:

  • やってみたら収穫や勉強になることが多くあったから国際会議に応募してみてよかった
  • フリートーク力が必要
  • スライドをしっかり作ったらクリティカルな質問ももらえる
  • 英語で発信していかないとやばいと思った
  • キャッチーで新規性がある研究テーマで実践的な示唆を提示したところ,評価してもらえた

 

 

海外へ関心がむいたので,教育工学に関する国際カンファレンスや国際ジャーナルについて少し調べた。

scrapbox.io

まだサーベイ中なので,もう少しまとまったらまたエントリを書きたいと思う。

 

 

 

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寝坊して授賞式の5分前に現場についた。そういうところも直したい。本当に…。