オンライン学会向けZoomマニュアルの公開
概要
日本教育工学会や情報処理学会の情報をもとに、オンライン開催の学会で使える発表者向け・聴講者向けZoomマニュアルを作成しました。
著作権フリーで配布いたしますので、どうぞご自由にご活用ください。
最後に実際に参加者企画セッションで発表してみて感じたよかった点と課題をまとめました。
※2020年4月18日:著作権のことなど、いくつか追記しました。
※2020年11月4日:マニュアルを一部修正しました。
経緯
3月18日・19日に行われた第26回大学教育研究フォーラムが、新型コロナウイルス拡大による影響をふまえ、オンライン開催されました。
大学教育研究フォーラムは毎年私が所属している研究科の協力講座である京都大学高等教育開発推進センターが中心となって運営しています。
オンライン開催にあたり、口頭発表およびポスター発表は以下のような対応に。
発表で使用するスライド・ポスターおよび発表原稿の電子ファイル(PPT、PDF形式等)をWebページに掲載
発表者が参加者との交流のためにZoom、YouTube、Twitter、Facebook、電子メールなどの利用を希望する場合は、その情報をWebページに掲載できます。
シンポジウムはYouTubeでストリーミング配信、参加者企画セッションはZoomを用いて開催となりました。
私(大学院生)は参加者企画セッションで発表予定だったこともあり、実行委員会の先生からお話を頂戴し、発表者向けおよび聴講者向けZoomマニュアルの作成を手伝いました。
参考にした資料
日本教育工学会全国大会のオンライン開催の運用メモと、情報処理学会第82回全国大会のオンライン開催ポータルにある「手引き」を参考に、マニュアルを作成しました。
作成にあたり、
①それぞれの実行委員の方々が事前に作成した資料や反省点などを統合すること、
②情報を1枚に集約した簡略版を作成すること、を意識しました。
作成したマニュアル
簡易版、発表者向け、聴講者向けの3種類のマニュアルを作成しました。
↑簡易版の2枚(イメージ)。
↑発表者向けおよび聴講者向けマニュアルの例(イメージ)。具体的な操作方法を記載しています。
以下のリンクから作成したマニュアル(pdf,pptx)をダウンロードできます。
※当日配布した物から、新たにCCマークの付与&誤字を修正したデータを掲載しています。
3月31日追記:ご助言をいただき、メールに添付できる容量に圧縮したPDFを追加いたしました!
11月4日追記:参加者の名前の付け方を修正したマニュアル(v2)に差し替えました。
著作権をCC BY 4.0(Creative Commons — 表示 4.0 国際 — CC BY 4.0)に設定しました。大学関係者をはじめ、オンラインセミナーを開催する企業の方なども気軽にご活用ください。
4月18日追記:
Zoom bombingの発生やセキュリティの脆弱性を受けて、ZoomのUIやパスワード要件が変更されました。
現時点でパスワード要件について説明したスライドは加えられていません。改良したらまたアップロードいたします。(追記終わり)
著作権に関しては最新情報を要確認
学会でのオンライン発表は、自動公衆送信による再送信とみなされます。
公衆送信権(http://www.furutani.co.jp/cgi-bin/term.cgi?title=%97L%90%FC%91%97%90M)を侵害しないために、著作物を使用するには原則として、著作権者の許諾が必要となります。
作成したマニュアルでも著作権について触れておりますが、これらは2020年3月16日時点の情報をもとに学会運営向けで作成しました。
授業でZoomを活用する場合*は、現行の著作権法35条に基づき、より円滑に著作物が利用できます。
*受講生のみを対象に、同時双方向授業かつライブ授業で行う場合、著作物の許諾を得なくても問題ありません。
しかし、オンデマンド配信や不特定多数が視聴できる場合は、注意が必要です。
詳細は下記ブログの著作権のトピックに詳しいです。
digitalnagasaki.hatenablog.com
特に新型コロナウィルスの影響を受けて、様々な著作権団体が表明を出しています。
活用される際は、文化庁のHPなどを中心に、最新の情報をご確認ください。
その他にも、京都大学高等教育開発推進センターが提供しているHPから著作権に関する情報や、OCW向けの著作権処理フローチャートなどを見ることができます。
授業内で活用する場合は、ぜひこちらも御覧ください。
学会発表は授業過程ではない…
しかし、これら著作物利用の緩和は「教育機関」や「授業過程」など、対象が限定されています。
不勉強で恐縮ですが、学会のオンライン開催が「教育機関による公衆送信」とみなせるのか不明です。
学会や一般企業の方がZoomを利用される場合、著作権情報センターのガイドラインに従うことが無難のように思われます。
追記:オンライン授業/オンライン学会における著作物の利用
(2020年4月18日追記)
別記事で著作物についてまとめました。
現時点での結論を言うと、オンライン学会は教育機関としても含まれない&学会発表は授業ではないので、やはり著作物の許諾を取る必要がありそうです。
進展があったらまた書きます。
(追記終わり)
良かった点と課題
実際に運営をしてみて、良かった点と課題をまとめます。
良かった点
聴衆者向けの説明時間(5分)を設けたこと
参加者企画セッションの冒頭5分間、作成した聴衆者向け・簡易マニュアルを画面共有しながら、Zoomの操作方法やマイクミュート&カメラをオンなどの注意点を説明しました。
この際、「手を挙げる」機能のデモも実施し、参加者全員スムーズに対応している様子を確認できました。
外部接続のマイクとスピーカーを用意し、ハウリングを防いだ点
以前からZoomを使っているときに、PC内蔵スピーカーと内臓マイクを両方アクティブにし、ハウリングが生じるトラブルがよく起こると感じていました。
そこで予め参加者内でPC内蔵スピーカーを使わないよう徹底したので、ハウリングは一度も起こらずに済みました。
発表者が操作に慣れていた点
当日までに2度ほど事前確認をしていたことや、もともと技術リテラシーの高い発表者ばかりだったため、操作に手間取りませんでした。
休憩中は休憩時間を提示するスライドを画面共有した点
休憩中に休憩時間を書いたスライドを画面共有し、マイクとカメラをミュートにして過ごしました。
途中参加した聴衆にも今の状況を伝えやすいですし、些細なことですが重要だなと感じました。
課題
参加者名は「*参加者名_所属」をデフォルトにすると良さそう
マニュアルでは情報処理学会の運営を参考に、参加者名を[発表者]漢字氏名(ふりがな)_所属と表記するようにしました。
しかし、この設定だと長くて読みにくいという意見をもらいました。
今後は[発表者]は*マークに代替する、ふりがなは省略して問題ないと思われます。
発表者の例:*京大花子_京都大学
参加者の例:京大太郎_京都大学
※2020年11月4日、マニュアルに反映
参加者層を把握しづらい・参加者と交流しづらい
参加者企画セッションの冒頭で参加者名の変更をお願いしましたが、実際に参加者名を変えてくれる人は少なかったです。
漢字氏名or英語氏名で参加する人が多く、すでに知っている方でない限り参加者層がつかみにくいため、発表者としては不安に感じました。
また、発表中はどの時間帯に誰が参加をしてくれているかということに注意を払いにくいことや、会議を終えてしまうと終了時点の参加者一覧も閲覧できないことに気づきました。
そのため、参加者数の記録にとどまってしまい、誰が来たのか?という質的な側面を把握しかねたことが残念でした。
必要に応じて参加者一覧を確認したり記録(スクショやコピー等)する役割を作るなどの改善が考えられると思います。
教育工学会の運営メモでは発表後の交流が課題に挙がっていましたが、発表時間に制限がある場合は従来の対面の学会のような名刺交換の機会を設けることが難しいため、引き続き検討すべき課題かもしれません。
画面共有の時間が長いからカメラをオンにする人が少ない?
参加者企画セッションの冒頭では、没入感を高めるために参加者全員カメラをオンにするお願いをしましたが、中にはオフにされたままの方もいました。
もちろん事情は様々だと思いますが、個人的にカメラをオフにする理由の一つに、画面共有の時間が長いからカメラをオンにするメリットを感じないことがあると考えています。
画面共有の際に、全画面+別窓で顔のサムネイルが表示されますが、結局サムネイルを邪魔に感じ最小化にする人も多いのではないでしょうか。
カメラをオフにする人が多いと自分もオフに…と非表示の連鎖が起こりかねないので、質疑応答の時間だけでもカメラをオンにするよう促すことや、
参加者にカメラをオンにすることはテレプレゼンスを高めるために必要なこと、オンライン会議固有のコミュニケーションの在り方であり求められることだ、という意識を持っていただく工夫を検討する余地がありそうです。
※2020年11月4日追記:データダイエットの観点から、カメラをオフにする場合も多いかと思われます。
途中参加した人への対応
冒頭にZoomの操作説明をしましたが、途中参加する人の中にはマイクミュートを忘れている人も見受けられました。
ホストユーザーがミュートして対応しましたが、途中参加した人への説明方法は課題だなと思いました。(ホストユーザーが管理権限のないルールを適応する場合は特に。)
セッションの冒頭に聴衆者向けの説明を設け、より確実にする?
こうした課題を解決するために、セッションの冒頭に聴衆者向けの説明時間を設けて、説明&実際にやっていただくことを確実にするのがいいように思います。
チュートリアルセッションを別枠で設けることもいいとは思いますが、参加しない人もいるとおもうので、最低限必要なルール説明はセッションの冒頭に組み込むほうが良いかと思われます。
所感
オンラインで研究発表をすること自体は特に大きな支障もなく、問題なくできたと思います。
課題でも触れましたが、どうしても「発表」に注意が向き、参加者層の把握やその後の交流には意識が向きにくいように感じました。
また、顔が見えて名前や所属がわかっているほうが安心する…と素朴に思ったので、たとえ聴衆として参加するとしても、どのように参加するとテレプレゼンスやコミュニケーションの質を高められるか?という意識を持つと、より豊かな場と時間をオンラインでも共有できるのではないでしょうか。
その他
オンライン授業でもマニュアルを使えるのではないか、という声をいくつかいただいております。
ぜひ活用できるところがありましたら、ご使用ください!
授業に関しては様々な大学がマニュアルを公開してらっしゃいます。
こちらもご参照ください。
活用いただいた学会さま
これまでに、多くの学会さまから活用・参考にしていただいたとのご連絡をいただきました。ありがとうございます。
これからオンライン学会に向けて準備される方々の参考にもなると思いますので、紹介させていただきます。(敬称略)
日本文化人類学会第54回研究大会
https://jasca54.jimdofree.com/
大学教育学会第42回大会
https://daigakukyoiku-gakkai.org/site/
「宗教と社会」学会第28回学術大会
https://jasrs2020.blogspot.com/
日本理科教育学会北陸支部大会
https://www.knishide.org/support
日本音楽教育学会第51回全国大会
http://xn--6oqq31akwh8pa94cx0fi79cv40b.com/
地域活性学会第12回オンライン大会
https://www.chiiki-kassei.com/pb/cont/taikai/302
英米文化学会第162回例会
http://www.ses-online.jp/reikai162.html
日本質的心理学会第17回大会
http://www.mivurix.sakura.ne.jp/jaqp2020/program.html
植生学会第25回年次学術大会
http://shokusei.jp/baser/congress/ASVS2020
日本居住福祉学会第20回全国大会
第5回ポドサイト研究会
https://www.podocyte5.com/guidance
https://www.podocyte5.com/announcetopresenter
→ウェビナー形式の場合の発表者向けマニュアルを公開してらっしゃいます。再編集・再配布を許可していらっしゃるので、ウェビナーを検討している方はぜひご覧ください。
2020年12月7日時点